失業保険の会社都合退職と自己都合退職での違い

まずは動画で解説

労働者が失業した場合に、生活や雇用の安定を図るために行われる給付を「失業等給付」と言います。

一般的に失業時に受け取れる金銭として”失業保険”や”失業手当”と呼ばれているものが、求職者給付の「基本手当」です。

会社都合退職と自己都合退職では失業保険(基本手当)の受給において、どのような違いがあるのでしょうか。

自己都合退職と会社都合退職の違いは?

従業員が会社を退職するときの種類は、自己都合退職・会社都合退職と2つに分類されます。失業保険(基本手当)の受給の観点では、両者の違いはどのようなものでしょうか。

「自己都合退職」とは

自己都合退職とは、退職の要因が主に従業員側にある場合を指します。

たとえば、次のような理由で退職する場合です。

  • 会社に不満を抱いたため
  • 転職・起業をするため
  • キャリアアップを目指すため
  • 大学・大学院への進学や海外留学のため
  • 病気の治療・療養のため
  • 専業主婦・主夫になるため
  • 引っ越しのため
  • 妊娠・出産・育児・介護のため
  • 懲戒解雇

退職者が雇用保険上の「特定受給資格者」にあたらない場合の退職が、自己都合退職となります。

懲戒解雇が自己都合退職扱いなのは意外かもしれません。懲戒解雇を決定するのは会社側ですが、その原因は、従業員が法令や就業規則などに違反したことが原因であるため、失業保険の給付日数は自己都合退職の場合と同等となります。

「会社都合退職」とは

会社都合退職とは、退職者が雇用保険上の「特定受給資格者」に該当する場合の退職のことです。

次のような理由により退職する場合には、会社都合退職となり特定受給資格者になりえます。

  • 会社の倒産
  • 特定の事業所・支店の廃止や撤退
  • リストラ・人員削減のための退職勧奨
  • 人員整理を目的とする早期退職制度に従業員が応募
  • 慢性的な長時間残業
    • 月45時間以上の残業や休日出勤が3カ月以上連続しているなど
  • 会社の事情による休職命令を受けて、3カ月以上経っても命令が解除されない
  • 事業所移転により通勤が困難になった
  • 給与の支払いの遅延や未払いがある
  • 給与の大幅減額(目安として15%以上の減額)の提示があった
  • 会社から事前に説明を受けた待遇や業務内容と、実際の待遇や業務内容が異なっていることが判明した
  • 上司などからのパワハラ・セクハラを受けた
  • 同僚からのいじめを受けた。
  • 会社の法令違反が発覚した

自己都合退職であっても会社都合退職であっても、ハローワークから配布される雇用保険受給資格者証の「12.離職理由」欄に離職理由を示すコードが明記されます。

雇用保険受給資格者証の例/特定受給資格者の場合

雇用保険受給資格者証の例/特定受給資格者の場合

自己都合退職のメリット・デメリット

失業保険(基本手当)の受給という観点からは、自己都合退職することにどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

自己都合退職のメリット

失業保険の受給という観点からは、自己都合退職を選ぶメリットはありません。

ただ、転職活動をするときなど、離職理由を細かく追及されないことがメリットといえます。

自己都合退職のデメリット

自己都合退職の場合は、会社都合退職の場合と比べ、失業保険の給付期間も短く、給付開始時期も遅くなります。

会社都合退職の事由に該当するのに、会社が発行する離職票では自己都合退職扱いとされている場合は、ハローワークの判断で「特定受給資格者」として認められることもあります。

会社都合退職のメリット・デメリット

失業保険(基本手当)の受給という観点からは、会社都合退職することにどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

会社都合退職のメリット

失業保険の受給という観点からは、自己都合退職ではなく会社都合退職のほうがはるかにメリットがあります。

会社都合退職の場合は自己都合退職の場合と比べ、失業保険の給付期間が長く、給付開始時期も早くなります。

会社都合退職のデメリット

再就職活動時に提出する履歴書に、自己都合退職の場合は「一身上の都合により退職」と記載できますが、会社都合退職の場合は「会社都合により退職」と記載することになります。

面接などでも離職理由を細かく追及されることが予想されます。

また、失業保険の給付期間が長いとはいえ、受給中は基本的に働くことができないため、不安を抱くこともあるでしょう。

自己都合退職の際に準備すること

自己都合で退職する人が失業保険(基本手当)を受け取るために準備すべきことや注意点を説明します。

本当に自己都合退職なのか確認する

自己都合退職と思っていても、実は会社都合退職に該当する場合が多々あります。

例えば、給与の未払いに辟易して退職する場合や、パワハラ・セクハラに耐えかねて退職する場合などは、会社都合退職となります。

上記の「会社都合退職とは」の項目を参照して、当てはまる事由がないか確認しましょう。

雇用保険の加入期間を確認する

失業保険の給付日数は、雇用保険の被保険者であった期間(加入期間)によって異なります。

被保険者であった期間が10年未満の場合は”90日”、10年以上20年未満は”120日”と、30日分の開きがあります。

雇用保険の加入期間によっては、失業保険は受け取らずに、離職後すぐに再就職したほうがメリットがあるかもしれません。

なお、離職日から遡って2年の間に、最低12ヶ月以上雇用保険に加入していることが失業保険を受給するための必須条件です。

雇用保険被保険者証の有無を確認する

失業保険を申請するために、雇用保険被保険者証が必要になります。

万が一、紛失していた場合は、勤務先から再交付してもらう必要があるため、退職前に有無を確認しておきましょう。

自己都合退職・会社都合退職でよくある質問

自己都合退職と会社都合退職の違いにまつわる、よくある質問をまとめました。

自己都合退職でも失業保険の給付制限が解除されるケースとは?

自己都合退職でも、理由によっては「特定理由離職者」として認められ、給付制限が解除されるケースがあります。

特定理由離職者となりうる離職理由は次のようなものがあります。

  • 両親の死亡や病気、扶養のため
  • 妊娠・出産・育児のため
  • 自身の病気や視力・聴力の減退があるため
  • 人員整理目的の希望退職に応募したため
  • 職場で不当な扱いを受けたため
  • 配置転換や事業所の移転などにより通勤困難になったため

このような正当な理由がある退職の場合、特定理由離職者に認定してもらえる可能性があります。

会社都合退職なのに、自己都合退職にしてほしいと言われたら?

会社都合退職なのに、自己都合退職にしてほしいと迫ってくる会社は少なくありません。

理由のひとつが、厚生労働省からの企業に対する助成金で、会社都合退職者を出すことによって、助成金の受給要件を満たせなくなることがあるためです。

自己都合退職にしてほしいという依頼に応じる必要は一切ありません。

また、強引に退職届を書くよう迫られることもありますが、これも応じる必要はありません。

どうしても断れない場合は、「貴社、退職勧奨に応じ」などと会社都合であることを退職理由として記載します。

「一身上の都合により」と書いてしまうと、自己都合退職と扱われてしまいます。

自己都合退職を、会社都合退職にできる場合とは?

会社から不当に自己都合退職として処理されても、ハローワークに離職票とともに会社都合退職の根拠となる資料を提出することで、会社都合退職(特定受給資格者)として認められることがあります。

例えば、次のようなケースは会社都合退職として認められる可能性が高いケースです。

  • 事業所が遠方に移転したが、通勤できないため離職せざるを得ない
    事業所移転の通知と通勤経路と時間が分かる資料が根拠になります。
  • 職場で嫌がらせやセクハラ・パワハラを受けた
    画面キャプチャやメモなどが、ハラスメントの根拠資料となります。これらは退職前からを保存しておくことが大切です。
  • 賃金の未払いがあった
    就業規則・給与明細書・口座振込日がわかる預金通帳などが根拠資料になります。

その他、次のような場合も、会社都合退職として認められる可能性が高いです。

  • 賃金の減額があった
  • 36協定の限度基準を超える長時間労働があった
  • 退職を促されたことがある
  • 妊娠や出産を理由に不利益を受けたことがある

まとめ

失業保険(基本手当)の受給において、会社都合退職と自己都合退職でどのような違いがあるのか紹介してきました。

失業保険を受け取るという観点では、会社都合退職のほうがメリットは大きいですが、不当に自己都合退職として処理する企業も少なくありません。

ハローワークで、会社都合退職と判断される場合もあるため、離職前に証拠集めを忘れずにしておきましょう。

 

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