労働者が失業した場合に、生活や雇用の安定を図るために行われる給付を「失業等給付」と言います。
失業等給付は、求職者給付・就職促進給付・教育訓練給付・雇用継続給付の4種類に分けられますが、一般的に失業時に受け取れる金銭として”失業保険”や”失業手当”と呼ばれているものは、求職者給付の「基本手当」にあたります。
失業保険(基本手当)の手続きは、いつまでに行えば良いのでしょうか?
目次
失業保険の手続き期限
失業保険(基本手当)の受給期間は、原則として、離職した日の翌日から1年間です(※)。
この期間を過ぎると、所定給付日数分を受給し終わっていなくても、残りの失業保険は支給されません。
※給付日数が次の日数の人は例外で、次の受給期間です。
- 給付日数が330日の場合:1年間+30日
- 給付日数が360日の場合:1年間+60日
よって、失業保険の手続きは、離職後できるだけ早急に行っておきましょう。
この例では、所定給付日数が150日だった受給者が、ハローワークでの失業保険の手続きが遅れたがために、120日分のみ受給したところで受給期間が終わってしまっています。
ただ、雇用保険には基本手当以外にも様々な給付があります。以下の給付においては、手続き期限が過ぎても、2年という時効の期間内であれば申請できます。
- 就業手当(失業保険の受給資格を持つ人が、非正規かつ臨時的に就業した際に受け取れる手当)
- 再就職手当(失業保険の給付期間中に再就職した場合に受け取れる手当)
その他にも、就業促進定着手当・常用就職・支度手当・移転費・広域求職活動費・短期訓練受講費・求職活動関係役務利用費・一般教育訓練に係る教育訓練給付金・専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金・教育訓練支援給付金・高年齢雇用継続基本給付金・高年齢再就職給付金・育児休業給付金・介護休業給付金は、2年の時効期間内であれば申請できます。
退職理由による受給期間の違い
失業保険(基本手当)の受給期間(給付日数)は、雇用保険の被保険者であった期間や年齢・離職理由によって異なります。
自己都合退職の場合
自己都合退職の場合、雇用保険の被保険者であった期間の区分により給付日数が異なります。
被保険者であった期間 | 10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|
給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
※離職した日の満年齢65歳未満共通
例えば、被保険者期間が9年11ヶ月の35歳Aさんは”90日”、被保険者期間が10年1ヶ月の35歳Bさんは”120日”と、たった数ヶ月の違いで失業保険をもらえる期間が1.3倍以上異なります。
会社都合退職の場合
倒産・解雇により離職を余儀なくされたなど会社都合退職の場合も、雇用保険の被保険者であった期間・年齢により給付日数が異なります。
被保険者であった期間 | |||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10 年以上20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上45歳未満 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 | |
45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
例えば、被保険者期間が9年11ヶ月の35歳Cさんの勤務先が倒産してしまった場合、
“180日”がCさんの給付日数となります。
また、35歳で自営業から会社員に転職した矢先に解雇されてしまった、被保険者期間10ヶ月のDさんの場合、給付日数は”90日”となります。
失業保険の受給資格
失業者にも、正社員だった人・アルバイトだった人・出産を控えている人など様々な立場の人がいます。どのような受給資格を満たせば失業保険(基本手当)を受け取れるのでしょうか。
失業保険をもらえる条件
失業保険を受け取るには、受給資格を満たしている必要があります。
原則として「離職前2年間で雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上ある」人が受給できます。
ただし、倒産・解雇等の理由により離職した場合、やむを得ない理由により離職した場合は、離職前1年間に被保険者期間が通算して6ヶ月以上必要です。
また、失業保険は「失業の状態にある」人のみ受給できます。
失業の状態とは、次の条件を全て満たす場合のことをいいます。
- 積極的に就職しようとする意思があること。
- いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること。
- 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていないこと。
すなわち、次の就職先が決定していたり、内定している人は受給できません。
また、次のような人も、受給することができません。
- 妊娠・出産・育児・病気やケガですぐに就職できない人
- 就職するつもりがない人や家事や学業に専念したい人
- 会社などの役員に就任している人
※活動や報酬実績がない場合は、ハローワークで別途確認必要 - 自営業者
受給資格に当てはまらない場合は?
失業保険(基本手当)の受給期間は、原則として、離職した日の翌日から1年間です。
いつでも働ける状態にあることが失業保険の受給条件のひとつですが、妊娠・出産・育児・病気やケガですぐに就職できない人は、「いつでも就職できる状態」にないため失業保険の受給資格がありません。
やむを得ない理由で働けない上に失業保険ももらえないのでは、不公平です。そこで、働けない状態が30日以上続いた場合は、受給期間延長申請をして“支給を一時的に保留する”という手続きを行います。
妊娠・出産などが理由で受給資格から外れる場合
妊娠・出産の前後は、求職活動をして働ける状態ではないため、すぐには失業保険を受給できません。
そこで、妊娠・出産を理由とした受給期間延長の申請をして、失業保険の受給期間を最長4年まで延長します。つまり、失業保険の支給を保留にしておくことで、出産後、働けるようになってから失業保険を受給することができます。
また、失業保険の受給期間延長は、妊娠・出産以外にも次のような場合に申請できます。
- 病気やけがで働くことができない
- 親族の介護のため働くことができない
業務に起因する病気・けがのため受給資格から外れる場合
業務中に負傷したり、うつ病が発症したなど、業務に起因する病気・けがによって働けない状態になった場合は、失業保険の受給期間延長申請に加え、労働災害保険を申請しましょう。
労働災害保険は、会社所在地の都道府県の労働基準監督署で申請できます。
労働災害保険の休業補償を受給中であっても、失業保険の受給期間延長は申請できます。
失業保険をもらうための必要書類
失業保険(基本手当)の受給手続きに必要な書類や持ち物は次のとおりです。離職前に準備すべき書類も含まれているため、注意しましょう。
離職票
離職票は、離職した会社が発行した離職証明書に基づいて、ハローワークが交付する書類です。
ハローワークから会社に郵送して、その後、会社から離職者に郵送するため、手元に届くのは退職後10日ほど経ってからです。
退職前に、会社に離職票の発行依頼と送付先の住所の確認をしておきましょう。
雇用保険被保険者証
離職する会社に入社した時に交付されているものです。退職するときに会社から受け取ります。
証明写真2枚
縦3cm✕横2.5cmのサイズで本人と確認できる写真です。
個人番号確認書類および身元確認書類
以下の(1)と(2)のうちいずれかを持参します。
- マイナンバーカード
- 通知カードまたは個人番号が記載された住民票の写し(住民票記載事項証明書)
※(2)の場合は、加えて、運転免許証またはパスポート、写真付き住民基本台帳カードなどうちいずれか1種類も持参します。
本人名義の通帳またはキャッシュカード
普通預金口座のみです。失業保険の振込先になります。
本人の印鑑
認め印でも構いませんが、スタンプ印は不可です。ハローワークでの手続き時に、訂正事項がある場合に訂正印として使います。
船員であった人は船員保険失業保険証または船員手帳
会社都合退職として認めてもらうための書類がある人はそれらの書類
本当は会社都合退職なのに自己都合退職と離職票に記載する会社もあります。該当する人は、パワハラや退職勧奨があったことを示す録音・メモ・記録など、本来は会社都合退職である根拠を持参します。離職票とこれらの根拠資料を元に、ハローワークが会社都合退職として扱うかを判断します。
失業保険をもらうまでの流れ(ステップ)
離職してから失業保険(基本手当)を受け取るまでの流れをステップごとに説明します。
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離職
失業保険を受け取るには、会社が発行する「離職票」が必要です。離職票は、離職したことを証明する公的な文書で、ハローワークでの受給手続きで必要になります。
会社によって、退職者に離職票の要不要を聞き必要なら発行、退職者全員に発行、退職者からの要望がなければ発行しないなど、対応が異なっているのが現状です。
退職後に失業保険を受け取る場合は、退職前に会社に離職票の発行を申し出ておきましょう。
離職票は、退職後に会社から自宅に郵送されてくることがほとんどです。
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受給資格の決定
退職後、ハローワークに出向き、失業保険の受給資格と離職理由の確認を受けます。
失業の状態にあり、かつすぐに働けるかどうかが確認されます。
ハローワークが確認する点は、「就職する意思といつでも就職できる能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態であること」です。
受給資格の決定後、「雇用保険受給資格者のしおり」が交付されます。
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雇用保険説明会
受給資格決定の約1週間後に「雇用保険説明会」があります。
指定された開催日時に再びハローワークに出向きます。
雇用保険説明会では、受給資格者のしおりに基づき、雇用保険の受給中の諸手続きや失業認定申告書の書き方などの解説を受けます。
この説明会のときに、雇用保険受給資格者証が交付されます。
後で説明する、原則4週に1回の失業認定日にハローワークに出頭する必要がありますが、失業認定日がいつなのかも雇用保険説明会のときに通知されます。
上記、雇用保険受給資格者証の例では「3-木」という記載が失業認定日を示しており、この受給者の場合、失業認定日は必ず木曜日となります。何月何周目の木曜日なのかは配布されるカレンダー等で確認できます。
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待期満了
7日間の待期期間が経過すると待期満了となります。また、自己都合退職の場合は給付制限があるため、待期満了の翌日からさらに3ヶ月間は失業保険が支給されません。
基本手当の支払いは預金口座振り込みとなるため、待期満了となっても特に連絡が来たりするようなことはありません。
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失業の認定
受給資格決定から約3週間後が、一回目の失業認定日となります。
指定される失業認定日にハローワークに出頭して、仕事をしていないか・求職活動をしたか・すぐに働ける状態かどうかの確認を受けます。
認定日は、病気・看護・採用試験の受験など、やむを得ない事情がない限り変更することができません。
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基本手当の支払い
失業の認定を受けてから1週間程度で指定した普通預金口座に1ヶ月分の失業保険が振り込まれます。
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原則4週に1回の失業認定日
失業保険の給付開始後も、原則4週に1回の失業認定日にハローワークで失業の認定を受けます。確認される内容は初回の失業認定日と同様ですが、初回以降も必ず本人がハローワークに出頭しなくてはいけません。
失業認定日から次の失業認定日の約4週間で、原則2回以上の求職活動実績が必要ですが、ハローワーク内での職業相談も求職活動実績として認められます。
失業認定日には必ずハローワークに出向くので、職業相談も一緒に行っておくと良いでしょう。職業相談では失業保険の手続き時に交付される「ハローワークカード」を提示する必要があるため、雇用保険受給資格者証とセットで保管しておきましょう。
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支給終了
給付日数分の給付が終了すると支給終了となります。失業保険の給付中に再就職した場合も支給終了となりますが、給付残日数等の条件により、再就職手当が受け取れることがあります。
まとめ
失業保険(基本手当)の手続きは、離職後すぐに行いましょう。失業保険の受給期間は、原則として、離職した日の翌日から1年間です。
この期間を過ぎると、所定給付日数分を受給し終わっていなくても、支給が打ち切りになってしまいます。
また、離職後、失業保険を受給せずに再就職し、その後、再就職先をすぐに退職することになってしまった場合も、前職の離職から1年間以内であれば失業保険の受給資格があります。