労働者が失業した場合に、生活や雇用の安定を図るために行われる給付を「失業等給付」と言います。
失業等給付は、求職者給付・就職促進給付・教育訓練給付・雇用継続給付の4種類に分けられますが、一般的に失業時に受け取れる金銭として”失業保険”や”失業手当”と呼ばれているものは、求職者給付の「基本手当」にあたります。
この失業保険(基本手当)を受け取るためには、原則4週に1回の「失業認定日」にハローワークに出向き、失業状態であることを認定してもらう必要があります。
この失業認定日には何をすべきでしょうか?失業保険を必ず受け取るために事前に知っておくべき8つの項目を紹介します。
目次
失業保険認定日とは
失業保険(基本手当)の支給開始後、原則4週に1回の「失業認定日」に受給者本人がハローワークに出向く必要があります。失業認定日とは、失業保険受給者が本当に失業している状態かをハローワークが確認する日です。
失業認定日は、原則として4週に1回ですが、曜日は人により異なります。自分の失業認定日がいつなのかは雇用保険説明会のときに通知されます。
この雇用保険受給資格者証の例では「3-木」という記載が失業認定日を示しており、この受給者の場合、失業認定日は必ず木曜日となります。何月何周目の木曜日なのかはハローワークで配布されるカレンダー等で確認できます。
自己都合・会社都合?退職理由で認定日も変わる
従業員が会社を退職するときの種類は、自己都合退職・会社都合退職と2つに分類されます。自己都合退職の人も会社都合退職の人も、失業認定日に行うことは同じですが、失業保険の支給開始時期が異なります。
「自己都合退職」とは
自己都合退職とは、退職の要因が主に従業員側にある場合を指します。
たとえば、次のような理由で退職する場合です。
- 会社に不満を抱いたため
- 転職・起業をするため
- キャリアアップを目指すため
- 大学・大学院への進学や海外留学のため
「会社都合退職」とは
会社都合退職とは、退職者が雇用保険上の「特定受給資格者」に該当する場合の退職のことです。
たとえば、次のような理由で退職する場合です。
- 会社の倒産
- 特定の事業所・支店の廃止や撤退
- リストラ・人員削減のための退職勧奨
- 人員整理を目的とする早期退職制度に従業員が応募
会社都合退職の場合は、自己都合退職よりも初回の失業認定日が早くなります。すなわち、失業保険の支給も早く始まります。
自己都合退職者の場合は、失業保険の支給開始前に3ヶ月間の「給付制限」があり、その分失業保険の支給が遅れます。この給付制限は、自分の都合で退職しているので、経済的な備えはできているはずだということで設けられています。
退職から失業保険をもらうまでの流れ
離職してから失業保険(基本手当)を受け取るまでの流れをステップごとに説明します。
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離職
失業保険を受け取るには、会社や勤務先が発行する「離職票」が必要です。離職票は、離職したことを証明する公的な文書で、ハローワークでの受給手続きで必要になります。
会社によって、退職者に離職票の要不要を聞き必要なら発行、退職者全員に発行、退職者からの要望がなければ発行しないなど、対応が異なっているのが現状です。
退職後に失業保険を受け取る場合は、退職前に会社に離職票の発行を申し出ておきましょう。
離職票は、退職後に会社から自宅に郵送されてくることがほとんどです。
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受給資格の決定
退職後、ハローワークに出向き、失業保険の受給資格と離職理由の確認を受けます。
失業の状態にあり、かつすぐに働けるかどうかが確認されます。
ハローワークが確認する点は、「就職する意思といつでも就職できる能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態であること」です。
受給資格の決定後、「雇用保険受給資格者のしおり」が交付されます。
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雇用保険説明会
受給資格決定の約1週間後に「雇用保険説明会」があります。
指定された開催日時に再びハローワークに出向きます。
雇用保険説明会では、受給資格者のしおりに基づき、雇用保険の受給中の諸手続きや失業認定申告書の書き方などの解説を受けます。
この説明会のときに、雇用保険受給資格者証が交付されます。
原則4週に1回の失業認定日がいつなのかも雇用保険説明会のときに通知されます。
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待期満了
7日間の待期期間が経過すると待期満了となります。また、上記で説明したとおり、自己都合退職の場合は給付制限があるため、待期満了の翌日からさらに3ヶ月間は失業保険が支給されません。
また、基本手当の支払いは預金口座振り込みとなるため、待期満了となっても特に連絡が来たりするようなことはありません。
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失業の認定
受給資格決定から約3週間後が、1回目の失業認定日となります。
指定される失業認定日にハローワークに出頭して、仕事をしていないか・求職活動をしたか・すぐに働ける状態かどうかの確認を受けます。
認定日は、病気・看護・採用試験の受験など、やむを得ない事情がない限り変更することができません。
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基本手当の支払い
失業の認定を受けてから1週間程度で指定した普通預金口座に1ヶ月分の失業保険が振り込まれます。
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原則4週に1回の失業認定日
失業保険の給付開始後も、原則4週に1回の失業認定日にハローワークで失業の認定を受けます。確認される内容は初回の失業認定日と同様ですが、初回以降も必ず本人がハローワークに出頭しなくてはいけません。
失業認定日から次の失業認定日の約4週間で、原則2回以上の求職活動実績が必要ですが、ハローワーク内での職業相談も求職活動実績として認められます。
失業認定日には必ずハローワークに出向くので、職業相談も一緒に行っておくのがおすすめです。
また、職業相談では失業保険の手続き時に交付される「ハローワークカード」を提示する必要があるため、雇用保険受給資格者証とセットで保管しておきましょう。
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支給終了
給付日数分の給付が終了すると支給終了となります。失業保険の給付中に再就職した場合も支給終了となりますが、給付残日数等の条件により、再就職手当が受け取れることがあります。
失業保険をもらうには認定日までに「2回以上」求職活動が必要
失業保険(基本手当)をもらうためには、受給資格を得た後も、”再就職の意思がある”・”失業認定日までに規定の回数求職活動を行っている”という2つの条件を満たす必要があります。
規定の回数とは、原則として前回の認定日から次の認定日の前日までの期間中(約1ヶ月間)に、最低2回以上です。
(自己都合退職による給付制限がある場合は、初回のみ最低3回以上)
再就職の意思があり規定の回数求職活動を行っていることをハローワークに示して、認めてもらう日が失業認定日です。
失業保険の受給者は、失業認定日にハローワークで「失業認定申告書」を提出します。
失業認定申告書は失業認定日ごとに1枚記入します。
画像引用雇用保険の失業等給付受給資格者のしおり/厚生労働省鹿児島労働局
求職活動と認められる6つの活動
失業保険(基本手当)を受給するにあたり、失業認定日までに原則2回以上の求職活動を行う必要がありますが、求職活動実績として認められる活動にはどのようなものがあるでしょうか。
求人に応募する
人材募集を見つけて応募します。応募1社につき求人活動実績1回とカウントされます。応募する求人情報は、どの媒体に掲載されているものでも構いません。転職サイト等の他、情報誌やハローワークの掲示でも求人情報を探せます。
また、応募後の合否は関係なく、応募すれば求職活動実績とカウントされます。
失業認定申告書には「○○株式会社の求人に応募し、書類選考待ち」や「○○株式会社の求人に応募したものの不採用」などと記入します。
画像引用雇用保険の失業等給付受給資格者のしおり/厚生労働省鹿児島労働局
雇用保険説明会への参加
失業保険の受給手続きにあたり、必ず全員が参加するのが「雇用保険説明会」です。
雇用保険説明会では、雇用保険の受給中の諸手続きや失業認定申告書の書き方などの解説を受けますが、この説明会への参加も1回分の求職活動実績となります。
よって、初回の失業認定日で提出する求職活動のうち1回分は、雇用保険説明会への参加で実績となります。
雇用保険説明会への参加が求職活動実績として記録されている(上記例では“集団説明済み”印)
ハローワークで職業相談をする
ハローワークで職業相談を1回すると求職活動実績1回とカウントされます。
失業認定日には必ずハローワークに出向くので、職業相談も一緒に行っておくと良いでしょう。
失業認定日に行った職業相談は、次回の失業認定日で提出する求職活動実績となります。
ハローワーク内での職業相談を求職活動実績として認める印が押されている
また、ハローワークで職業相談をするときは、失業保険の手続き時に交付される「ハローワークカード」の提示が必要なので、忘れずに持参しましょう。
ハローワークでセミナーを受講する
ハローワークでは「就職支援セミナー」や「面接攻略講座」など、再就職を支援する様々なセミナーを開催しています。ハローワーク主催のこれらセミナーの受講も求職活動実績として認められます。
ハローワークのセミナーの詳細は、ハローワーク内に掲示されたポスターやWebサイトなどで確認できます。
民間機関・公的機関が実施する職業相談・セミナーなどに参加
ハローワーク主催のセミナー以外にも、民間機関などが開催する転職相談会や転職フェア等への参加も求職活動実績になります。
ただ、その参加実績を失業認定申告書に記入するだけではなく、参加したことを証明できるものの提示を求められることがあります。
転職フェアなどに参加した際は参加証をもらい、失業認定日にハローワークに持参しましょう。
各種国家試験・検定試験を受験
再就職に関する各種国家試験・検定試験の受験も求職活動実績として認められます。
ただ、ハローワークがその資格が再就職に有効だと判断できる試験に限ります。希望している職種とあまりにも無関係な試験だと、求職活動実績として認められないことがあります。
また、資格試験受験を求職活動実績とする場合は、受験の証拠として失業認定日に受験票など試験日と氏名が記載されたものを持参しましょう。
求職活動と認められないもの
求職活動といっても、応募や面接への参加などの活動を伴わない、単なる情報収集では求職活動実績とは認められません。
新聞やインターネットでの求人情報の収集
新聞やWebサイトなどで求人情報を閲覧しただけでは、求職活動としての実績にはなりません。また、単なる問い合わせも求職活動の実績にはなりません。
ただ、求人を出している企業との間で、希望条件など具体的な交渉が発生している場合は求職活動と認められる場合があります。
ハローワークのパソコンで求人を検索
ハローワークには自由に求人情報が検索・閲覧できるようパソコンが設置されています。上で紹介したとおり、ハローワークでの就職相談は求職活動の実績になりますが、ハローワークの中であってもパソコンで情報を検索しただけでは求職活動の実績にはなりません。
転職サイトや派遣会社への登録
派遣会社や人材紹介会社、転職サイトなどに登録しただけでは求職活動の実績にはなりません。
登録した後、実際に企業へ応募した時点で求職活動の実績になります。
失業認定日にハローワークに行けない場合は?
失業認定日にハローワークに来所できなかった場合、その認定日までの期間について失業の認定ができないため、その期間の失業保険(基本手当)は受け取れません。
ただし、やむを得ない理由がある場合にのみ、失業認定日を変更することができます。
「やむを得ない理由」は次のようなもので、いずれも”事前に”ハローワークに連絡します。
- 就職
- 就職面接・採用試験など
- 各種国家試験・検定などの受験
- ハローワークの指導による講習の受講
- 働くことができない期間が14日以内の病気・けが
- 本人の婚姻
- 親族の看護・危篤または死亡・婚姻(親族の範囲に制限あり)
- 中学生以下の子弟の入学式または卒業式
上記のような理由がある場合は、失業認定日を変更できますが、原則としてそのやむを得ない理由を証明する証明書などの提出が必要です。
必要な証明書などについては、ハローワークに問い合わせて確認しましょう。
失業認定日にスムーズに認定してもらう方法
失業認定日に滞りなく認定作業を終えるために、持参すべきものや注意すべき点があります。
まず、失業認定日には「失業認定申告書」で求職活動実績を申告しますが、虚偽は絶対に記入しないようにしましょう。
ハローワークから利用機関等へ問い合わせて事実確認をすることがあり、事実と申告内容が異なっていた場合は、不正受給とみなされる可能性があります。
また、失業認定申告書に記載した実績について証拠の提示を求められることがあります。特に民間機関によるセミナーや資格試験などを参加・受験した場合は、受講証や受験票など、参加したことが証明できる書類を持参しましょう。
次に、求人への応募を求職活動実績とする場合、実績を作りたいからといって入社する意志のない求人へ応募してはいけません。
面接に進んだものの面接を辞退した場合、求職活動実績が無効になる可能性があります。
まとめ
失業保険(基本手当)を必ず受け取るために事前に知っておくべき8つの項目を紹介しました。
失業認定日には必ずハローワークに出向く必要があります。失業認定日は年間カレンダーで決められていますので、事前にスケジュールを調整しておきましょう。